家庭医療専門医の伊藤院長による医療コラム 連載第4回 「なんだか調子が悪い…」名もなき不調との向き合い方
検査で異常がなくてもつらい症状に、家庭医はどう向き合うのか
検査では異常はないと言われたけれど、
「喉に何かがつかえている感じがする。」
「ふわふわしためまいがする。」
「息がつまるように胸が苦しくなる。」
「なんとなく食欲が出ない。」
このような症状で悩んだことはありませんか。
血液検査やレントゲン、CTなどの検査を受けても、「異常はありません」と言われたり、「この症状なら別の診療科を受診してください」と勧められたりして、不安や戸惑いを感じた方もいるでしょう。
検査で異常が見つからないことと、症状がないことは同じではありません。
もちろん、重大な病気が隠れていないかを見極めることはとても大切です。
そのうえで、原因がすぐに特定できない場合でも、「異常がないから大丈夫」で終わることはありません。
診察では、
「いつ症状が出ますか」
「眠れていますか」
「仕事や学校には行けていますか」
「生活や家庭で何か変化はありましたか」
など、体のことだけでなく、症状が日々の生活にどのような影響を与えているのかについてもお話をうかがいます。
例えば、40代男性が「喉に何かがつかえている感じがする」と受診されました。
耳鼻科で調べても異常はありませんでした。
何度か診察を重ねるうちに、4月から職場で責任ある立場となり、帰宅後も仕事に関する勉強を続ける毎日だったことが分かりました。
生活リズムを整え、仕事にも少しずつ慣れてくると、症状も次第に軽くなっていきました。
また、70代女性が「ふわふわしためまいがする」と受診されました。
脳神経外科でMRIを撮影しましたが異常はありませんでした。
お話をうかがうと、親しかった近所の友人が亡くなったことをきっかけに、不安が強くなっていたことが分かりました。
一人暮らしでもあったため、デイサービスを利用し、地域の人との交流が増えるにつれて、不安が和らぎ、めまいも少しずつ落ち着いていきました。
こうした診療をしていると、体調は病気だけで決まるものではないと実感します。
睡眠不足やストレス、人間関係、仕事や家庭での出来事、季節の変化や生活環境の変化など、さまざまなことが重なって症状として現れることは珍しくありません。
だからこそ、薬を処方するだけでなく、生活の中に改善の糸口がないかを一緒に考えることも大切にしています。
一度の診察ですべての答えが見つかるとは限りません。
時間がたって初めてわかることもありますし、暮らしの変化が新しい手がかりになることもあります。
そのため私は、「また様子を聞かせてください」とお伝えして診察を終えるよう心がけています。
家庭医が診ているのは、病名だけではありません。
検査結果だけでは見えてこない辛さにも耳を傾け、その人が毎日を少しでも安心して過ごせるように、一緒に考えていくことを大切にしています。