家庭医療専門医の伊藤院長による医療コラム 連載第3回 病気だけじゃない。「あなたの暮らし」まで診る理由
生活や仕事も、診察に欠かせない大切な情報です
「仕事は何をされていますか?」
「ご家族とは一緒に暮らしていますか?」
「学校では部活動していますか?」
診察でこのような質問をされたことはありませんか。
「どうして仕事や家庭、学校のことまで聞かれるのだろう?」と感じたことがある方もいるかもしれません。
家庭医は、病気だけでなく、その人の暮らしにも目を向けています。
それは、症状の背景に暮らしが大きく関わっていることが、決して珍しくないからです。
例えば、
- 血糖値がなかなか改善しない方がいました。
よく話を聞くと、単身赴任を機に外食が増え、食生活が大きく変わっていました。 - 夜にしっかり眠れないという方がいました。
共働きの子ども夫婦に代わって毎晩遅くまで孫の世話をしており、自分の休む時間を十分に取れずにいました。 - 慢性的な腰痛に悩まされていた方がいました。
脳梗塞の後遺症が残る配偶者を毎日介護しており、体に大きな負担がかかっていました。 - 気分の落ち込みが続いていた方がいました。
認知症の親の介護が長く続き、心身ともに疲れ切っていました。 - 繰り返す腹痛で受診した小学生がいました。
授業中に「トイレに行きたい」と言い出しづらく、便秘が症状の一因となっていました。
こうした問題は、薬だけでは解決できません。
生活リズムを見直したり、介護サービスや地域の支援につないだり、学校や職場と協力したりすることで、症状が改善することもあります。
診察で何気なくお聞きする仕事や家庭、学校のこと。
その何気ない会話の中に、一人ひとりに合った治療につながる大切なヒントが隠れていることがあります。
だからこそ家庭医は、診察で仕事や家庭、学校のことについてもお話をうかがっています。