家庭医療専門医の伊藤院長による医療コラム 連載第5回 子どもの長引く咳や喘息。もしかして原因は「家族の〇〇」かも?

子どもの長引く咳や喘息。もしかして原因は「家族の〇〇」かも?

風邪をひくと、熱、鼻水、咳、のどの痛みなど、いろいろな症状が出ます。
特に子どもの咳が長引くと、「風邪が治っていないのかな」「喘息なのかな」と心配になることもあるでしょう。

長引く咳には、喘息や鼻の症状、感染後の咳など、さまざまな原因があります。
診察では、どんな咳なのか、いつから続いているのか、どんな時に悪化するのかなどをお聞きします。

それだけではありません。
「家ではどうですか?」
「学校ではどうですか?」
「家の中でたばこを吸う人はいませんか?」
「ペットは飼っていますか?」
「最近、引っ越しなど生活の変化はありませんでしたか?」
こうしたことも、子供の咳を考えるうえで大切な情報になります。

※以下は、実際の診療でみられる状況をもとに構成した架空の事例です。


例えば、13歳の中学生が「咳が長引いている」と受診したとします。
話を聞いてみると、学校ではそれほど咳は出ないのに、自宅に帰ると咳がよく出ることが分かりました。
家族に紙たばこを吸う人はいないとのことでしたが、詳しくお聞きすると、同居する祖父が紙巻きたばこをやめるために、家の中で加熱式たばこを使用していることが分かりました。

喘息の可能性も考えて治療を始めると、咳は改善しました。
一方で、お母さんから「毎日吸入を続けるのは負担になっています」と相談がありました。

そこで、子どもの治療だけでなく、家庭の環境にも目を向けることにしました。
祖父には禁煙外来を勧め、禁煙に取り組んでもらうことになりました。
しばらくして祖父も禁煙することができ、たばこ代に使っていたお金を、孫の誕生日プレゼントに使ったそうです。
子どもの咳を診ていたはずが、家族の健康にも目を向けることになり、家族にとってよい変化につながりました。

子どもの症状だからといって、子どもだけを診ればよいとは限りません。
家庭で過ごす時間が長い子どもにとって、家族や住んでいる環境は、体調に影響することがあります。

これは咳に限ったことではありません。
皮膚のかゆみやおなかの不調、体の痛みなども、生活や家庭の環境を見てみると、思わぬ手がかりが見つかることがあります。

家庭医は、目の前の症状だけでなく、その人を取り巻く家族や生活にも目を向けます。
「この症状の原因は、体の中だけにあるのだろうか?」
そう考えてみることで、薬を使うだけでは見つからなかった解決策が見えてくることがあります。

子どもの咳を診ていたら、祖父の禁煙につながった。
そんなところから、家族の健康が変わっていくこともあります。

伊藤 真次
筆者プロフィール
院長

伊藤 真次 (ITO Shinji) 医師

神奈川県出身/東北大医学医学部 卒業

資格
  • 日本内科学会 認定内科医
  • 日本プライマリ・ケア連合学会 プライマリ・ケア認定医・指導医
  • 日本老年医学会 老年専門医・指導医
  • 米国家庭医療学会 家庭医療専門医
  • 米国家庭医療学会 老年科専門医